現在のゲーム開発では,1社がすべての作業を行うことは珍しい。むしろ開発の規模が大きくなるにつれて,各分野ごとにアウトソーシング(外部委託)されるのが自然だろう。
韓国でも,“可愛い系の3D/2Dグラフィックス”の分野では,BANANA MONというちょっと変わった名前のスタジオがもっとも大きなシェアを持っている。韓国・釜山で開催されたゲームショウG-Star 2015のB2B(商談向け)エリアに同社がブースを構えていたので,代表を務めるJeffery氏に“BANANA MON”について詳しく聞いてみた。
BANANA MONは,もともと韓国の開発メーカーKOGのグラフィックス関連業務を請け負うために設立されたスタジオだ。KOGがこれまで手がけたタイトル「ELSWORD」「ファイターズクラブ」「グランドチェイス」などのキャラクターやアバターアイテムの数々を,同スタジオが製作している。
ちなみに今回話を聞いたJeffery氏は,「ELSWORD」のメインデザイナーを長年担当している人物だ。せっかくなので,ELSWORDでお気に入りのキャラについて聞いてみたところ,少しはにかみながら“イヴ”だと答えてくれた。
業務が軌道に乗ってからはKOG以外からの請負も積極的に行っており,これまでにNexon Korea,Neople,allm,Ngineなど,30社近くのメーカーとの協業実績があるという。直近では,Nexonのケモナー系オンラインRPG「アルピエル」のキャラクターもBANANA MONによるものだ。
クライアントとの契約上,関わったすべてのタイトル名を記事に出すのは控えてほしいとのことだが,話を聞いた筆者が代弁するならば,まあ,韓国産の可愛い系オンラインゲームを好む人なら,どこかでBANANA MONのグラフィックスを目にしているはず,といったところだろう。
BANANA MONでは,可愛い系のグラフィックにまつわる,あらゆるニーズに対応できる体制が調えられているとJeffery氏は語る。コンセプトからの描き起こしはもちろん,提供されたイラストからの3Dモデリング,ゲームの他国展開時におけるテクスチャなどの現地化(カルチャライズ)もお手の物だそうだ。
こういった業務を行うスタジオは何社かあるが,BANANA MONのデザイナーは正社員の割合が高く,長期にわたって安定したクオリティやテイストで提供できるのが強みとのこと。たとえばオンラインゲームは,年単位の運営が求められるため,キャラクターやアバターアイテムが追加されるたびに,グラフィックスのテイストが異なってしまうのは避けたいはずだ。そこで,その心配が少ないBANANA MONのリピーターになる開発会社が多くなるのだという。
近年はスマホアプリ関連の仕事も増えている。モバイル端末のスペックは急速に高まりつつあるが,一方で,タブレット端末はともかく,携帯電話という用途では,画面の物理的な大きさは以前からさほど変わらない。そんな小さな端末の画面でも見栄えがするキャラクターを作るには,PCオンラインゲームとはまた違ったノウハウが求められるとのことだ。
そのほか聞いていて興味深かったのは,韓国と日本では求められるテイストが微妙に違っているということだ。
たとえば,日本風のテイストは韓国でも求められるものの,それがあまりにも顕著だとダメらしい。また,韓国政府や“ゲーマーの親世代”からのゲームに対する風当たりが強く,「日本では受け入れられている過激なグラフィックスも韓国では槍玉に挙げられやすい」そうだ。もっとも程度の差はあれど,日本でもそれは変わらない気もするのだが。
2Dイラストの分野では日本のクリエイターには敵わないとのことだが,だからこそ日本のゲームメーカーが作成した2Dイラストを元に,BANANA MONが3Dキャラクターのモデリングを作成するという協業は,双方の持ち味をフルに活かせると期待しているようだ。今回,G-StarのB2B(商談向け)エリアにブースを出展した目的のひとつが,まさにそこにあるとのこと。興味を持った業界関係者の方は,コンタクトを取ってみてはいかがだろうか。
クラッシュ オブ キングス RMT