「原神」は、予想以上によくできたゲームである。「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」をコピーしつつアニメっぽくつくり替え、無料でプレイできるファンタジーロールプレイングゲームに仕立てたものと決め付けてしまうと、第一印象は良くないだろう。
「原神」は、予想以上によくできたゲームである。「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」をコピーしつつアニメっぽくつくり替え、無料でプレイできるファンタジーロールプレイングゲームに仕立てたものと決め付けてしまうと、第一印象は良くないだろう。
しかも、このゲームはPC版やPS4版もリリースされているのに、モバイルRPGでおなじみの「ガチャ」のシステムが搭載されている。プレイアブルキャラクターには、オタク心をそそる「俺の嫁」「わたしの夫」候補が豊富に揃っており(好きな人は好きなはず。個人的にはもちろん大好きだ)、課金を狙いにきているのは明らかだろう。
それでも「原神」は、リリース時の売上が世界的に発売された中国産ゲームとしては史上最高を記録したと報じられている。そしてこの記録が必然である理由は、ほんの数時間プレイしただけで理解できた。
西側の世界では、家庭用ゲーム1タイトルに60ドル(約6,300円)を支払うことがゲーマーの常識となっている。このため中国のデヴェロッパーがつくる無料のモバイルゲーム(中国で最も人気のモデルだ)は、あまりよくは思われてこなかった。
欧米のゲーマーやゲームデヴェロッパーは、中国企業が「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS(プレイヤーアンノウンズ バトルグラウンズ、PUBG)」や「フォートナイト」といった人気タイトルそっくりなゲームをつくることを長らく批判してきた。インディーゲームのなかには、リリース前にコピーされるようなものもあったほどである。そんなわけで中国のゲーム、特にモバイルゲームというと無条件に偏見をもたれ、多くのタイトルがそのまま拒絶されてきた。
ところが「原神」は、そんな偏見を多少は払拭してくれるはずだ。「ブレス オブ ザ ワイルド」のアニメ風模造品ではない。キャラクターを前面に押し出した、面白すぎてプレイする手を止められないほど魅力的なアドヴェンチャーゲームなのだ。「原神」は率直に言って素晴らしく、プレイしてはいけない理由は見当たらない。
ゲームは美しいアニメーションのカットシーンから始まり、そこで神が双子の片割れを連れ去ってしまう。ギリシャ様式の柱がずらりと並ぶ空中で繰り広げられる戦闘シーンのに続いて、主人公は世界を乗り越えて移動する力を奪われる。その後、シーンは静かなビーチへと切り替わり、いよいよアクションのスタートだ。
この美しい大陸テイワットには、7つの元素にまつわる能力を備えた生き物たちが存在している。主人公が最初に出会うのは、旅の仲間となる(『カードキャプターさくら』を思わせる)人形のような生き物パイモンだ。ちなみに、甲高いアニメ声で発せられる彼女の一人称称は「おいら」となっている。
そしてパイモンと一緒に連れ去られた双子の片割れを探すうちに、近くの町が龍に包囲されていることがわかり、調査へと向かうことになる。冒険の舞台となる世界には、岩だらけの崖、草の茂る平原、果物のなる木々、美しい海などがあり、確かに「ブレス オブ ザ ワイルド」に似ている。
生きたままの鳥を撃って鳥肉を入手することもできるし、トカゲを捕まえて苦いトカゲのしっぽを集めたり、キラキラ光る植物を集めたりすることもできる。断崖絶壁を登ったり、翼の形をしたグライダーで飛んでボコブリンのような敵の陣営に乗り込んだりする場面もある。宝箱はいたるところにあり、セロトニンが分泌され続けるようになっている。
任務と呼ばれるダンジョンやクエストをクリアすると、パーティーの仲間となるそうそうたるキャラクターたちとの出会いが待っている(ガチャに課金して手に入れることもできる)。メインキャラクターは戦闘中を含めほぼいつでも切り替えられるし、きっと切り替えたくなるだろう。